【完】午後7時のシンデレラ
「nan-naの看板モデルだから期待してたのに。
撮影前に逃げ出すわ。
所詮偽物の恋人なのに、緊張して撮影台無しにするし」
”偽物”という言葉に反応する。
「それは———」
反論しようと口を開いた瞬間、
「きゃあっ、離してくださいっ」
「どうせ暇でしょ〜」
女性の叫び声が聞こえてきた。
わたしは恭弥くんと顔を見合わせ、声のする方へ目を向ける。
その先には一人の女性がしつこそうな男に絡まれている。
助けなきゃ。
何かないか、とあたりを見回す。
「すみませんっ、ちょっと貸してくださいっ」
「お、おねえちゃんっ?」
落ち葉を掃いていたおじさんから、ほうきを借りる。
ほうきを持ってすぐに走り出す。
「っえ、おいっ」
恭弥くんの制する声も気にしない。