【完】午後7時のシンデレラ
パシャ。
気づけば、シャッターを切る音が耳に届く。
視線を感じ、その方を見ると黒のレンズがわたしを見つめている。
カメラから顔を離すと、恭弥くんの漆黒の瞳が現れる。
「ごめんなさいっ、急に走り出して...」
駆け寄って彼に謝ると、むにっとほっぺを引っ張られる。
「ばか。急に乗り込む奴がいるかよ」
「い、いひゃい...」
マネージャーさんの時ほどではないが、少しほっぺが痛む。
「ごめんな。助けに行かなくて」
わたしは頬を押さえて、彼を見上げる。
その瞳は咎めるようなものではなく、寂しそうな色を含んでいる。