【完】午後7時のシンデレラ
ゴーンと時間を知らせる鐘がなる。
音のする方を見ると、公園の中央にある鐘だ。
その音を聞いて、伸ばしかけた手を引っ込める。
「あー、19時ですね。
最後まで撮れましたし、終わりましょっか」
「だな」
スタッフさんからお開きの声がかかる。
わたしもマネージャーさんに呼ばれ、明日のスケジュールを確認する。
マネージャーさんと話すおかげで、少しでも心臓の興奮を抑えられた。
「どうする、志保。
家まで送ろうか?」
「あー、そうですね〜」
藤井さんの家って、絶対わたしの家の近くな訳ないよね。
早いとこ家に帰らないと、お母さんに怒られちゃう。
どう言い訳しようか考えるうちに、
「志保」
優しく名前を呼ぶ声がした。