【完】午後7時のシンデレラ
長い撮影のうちに、自分のことを志保と呼ばれることに慣れた。
それに今、名前を呼んだ声は、声を聞いただけで相手が誰だかわかる。
「どうしたの、恭弥くん」
振り向いて彼に駆け寄る。
「あの、さ...これから予定ある?」
「予定? 特にないけど...」
「じゃあっメシ行かね?」
嬉しそうに笑顔を向けてくれる。
行きたいっ!
瞬間、あの手紙が頭の中によぎる。
『撮影が終わるまで』
そう。
藤井さんは撮影が終わるまで、わたしに身代わりを頼んだ。
撮影が終わった今、わたしが彼の隣に、この場にいることはできない。