【完】午後7時のシンデレラ
小さく息を吐き、気持ちを整える。
「行きたい」
「じゃっ...」
「でも、行けない」
まっすぐに彼を見つめる。
もうこんなに近くに居られることはないと思う。
それなら、少しでも彼の記憶に残っていたい。
たとえそれが、藤井 志保の姿であっても。
「...え、なんで?」
状況がつかめず、苦笑いをこぼす彼。
「ごめんねっ。そういえば、友達と会う約束してたんだった」
パンッと両手を合わせて謝る。
「また撮影が一緒になった時は、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ笑顔を向けると、この場から離れたくてすぐに走った。