【完】午後7時のシンデレラ
4
教室の窓の桟に顎をつけ、男子たちがはしゃぐ校庭を眺める。
「おーい、なお?
焼きそばパン買ってきたぞー」
「んー。置いといてー」
背後からの勇人の声にそっけなく返す。
「ったくよー。オイルかぶったくらい、気にすんなよー」
「っ! 気にするでしょ普通!」
クラスメイトの言葉に食い気味に反応する。
今日の4限は車のエンジンを扱う授業だった。
集中していなかったわたしは、オイルが収納してある棚にぶつかり、もろにかぶってしまった。
またオイル臭い作業着と付き合わなきゃならない...。
「なあ、松永変わった?」
「それ思った。いつもなら炭水化物の塊の焼きそばパンにがっつくのにな」
「最近、雰囲気変わったとしか思えねえ...」
”可愛くなったけどな!”
という声が聞こえてきそうなくらい、クラスの男子は直を見つめる。