【完】午後7時のシンデレラ
「あの、どうして学校がわかったんですか?」
静かな空気に耐えられず、控えめに口を開く。
「貸してもらった制服に、ちゃーんと校章が入っていたから」
そう言われ、自分のセーラー服を思い出す。
セーラー服には左ポケットにハイコーの校章が刺繍されてある。
やっぱり校章で学校名がわかるんだ。
妙に納得する。
「わたしね、あの日どうしても会わなきゃいけない人がいたの」
申し訳なさそうに語る彼女は、なんだか寂しそう。
「これを逃すと二度と会えない。それほど大事な人に」
目線を落とす彼女の瞳はうっすらと輝いている。
その表情だけで、藤井さんがどれほどその人のことを大切に想っているかがわかる。
大切な人...。
ふと考えるだけで、頭の中には彼が現れる。
会いたいって心の中だと素直に言えるのに。