【完】午後7時のシンデレラ
ゆっくり、ゆっくり振り返る。
「...じゃないんだよな」
「恭弥くん...」
ジーンズをはきこなして、白のセーターの下からブルーのチェックのシャツをのぞかせた長身の彼。
右手にはしっかりとカメラが握られている。
「本当に、藤井 志保そっくりなんだな」
一歩一歩近くたびに彼の瞳の中に私が映る。
魔法にでもかかったみたいに、その場から動けない。
「確かに俺は藤井 志保に興味を抱いていた。
どんなやつだろうって楽しみにしてた」
気づけば彼と私の距離は縮まっていた。
あんなに遠く感じていたのに、手を伸ばせば掴める。