【完】午後7時のシンデレラ



シャッター音に合わせて、ポーズや表情を変える彼女はプロだ。



心の気持ちをそのまま顔に出してしまう、あのときの彼女と違う。



何かがおかしい。

俺が好きだと感じたあの子は、藤井 志保じゃないのか?



そう思ったら、いてもたってもいられなかった。



「藤井さん。本当のことを話してください」



次の現場へと移動する彼女を引き止め、俺はあの子への手がかりをつかんだ。




実際の彼女は化粧っ気のない素肌に、くせっ毛のヘアスタイル。


爪はオイルで黒ずんでいる。



抱きしめたときだって感じたのは、オイルの臭い。




それでも会えたことが俺にとっては嬉しかった。




「もういっかいキスしてもいい?」


「なっ、なっ」


「ごめん、可愛い」




俺の言葉で一喜一憂する彼女はもう、手放せない。



初めて撮りたいって思えたのが直だ。


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