ディスオーダーⅡ【短編集】
 ……でも、こんなことを母さんに言おうものなら、全力で止められるのがオチだな。

 想像できる未来に、思わず溜め息を漏らす。

 すごく気になるけれど、その区域に足を踏み入れるのは母さんにバレないように、か……。母さんを振り切って全力で走って向かうか、だな。

 雨の降らない区域のことを色々と考えていると、向こうの方から誰かが歩いてくるのが見えた。


「……クォート?」


 それは僕と同じクラスメートであり、友達のクォートだった。僕よりガッチリとした体型で、頼りがいのある彼は、一部の人からは【大将】なんて呼ばれている。

 そんな彼が、こんな雨の中、可愛らしいクマの絵がプリントされた傘をさして、どこへ行こうというのか。

 しばらく眺めていて、気が付いた。──クォートは、例の雨の降らない区域を目指している。 

 僕の家の周りには彼が訪ねるような家はないし、こんな雨の日は、みんな家から出ないことの方が多いのに……。

 それなのにこちらに向かってくるということは……もう、雨の降らない区域を目指しているということ以外、ありえないんだ。
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