ディスオーダーⅡ【短編集】
 クォートともとへ走って向かいながら、傘をひろげる。傘が完全にひろがるまでの間、少しだけ雨に濡れてしまったけれど、これくらい大したことじゃない、すぐ乾くだろう。


「やあ、クォート。どうしたの?」


 雨の降らない区域のそばに辿り着いた。クォートはやっぱり笑顔を見せている。どうやら、僕が来てくれて嬉しいらしい。


「お前も気になるだろ? レイン」


 「なにが?」なんてそんなくだらない質問はしない。言わずもがな、この雨の降らない区域のことだ。だから僕は「そうだね」と同意した。


「大人たちは気味悪がって近付きさえしないし、俺は気になって夜もまともに眠れねぇからさ。今日、確かめてやろうと思って」 

「確かめる?」

「そう。“これ”がなんなのか」


 クォートは再び空を見上げる。

 でも、正体を確かめるって言ったって、何をどうするつもりなのか……。僕にはクォートが何を考えているのか、さっぱり分からなかった。


「とりあえず、気になることを片っ端からやってみようと思う」


 クォートはそう言うや否や、地面に転がっている少し大きめな石を拾い上げた。


「何をする気?」

「まあ、見てなって」


 ニッと笑ったクォートは、その石を雨の降らない区域に向かって投げ入れた。刹那、僕たちは不思議は現象を目の当たりにする。

 その区域に投げ入れられた石は、数秒と立たないうちにシュワーっとミストのように消えていったんだ。
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