ディスオーダーⅡ【短編集】
 縦横1メートル。この雨の降らない区域にそうようにして……くりぬかれるようにして、綺麗に雲がない。空の青色だけが姿を覗かせている。


「ますます意味が分かんねぇな……!」


 ひとり、ブツブツと言葉を発するクォートは、服の中から小さいサイズの水筒を取り出した。家から持ち出してきたものなんだろう、バレないように服の中に隠していたんだと思う。


「今度は何をするの?」

「この中に入っている水を、ぶちまけてみようと思ってな!」

「……また消えるんじゃない?」

「いやぁ、分からねぇぜ? 石や枝なんかの固体だけが消える仕組みで、液体はイケるかもしれねぇしな!」


 ……どうだろう?

 降り続けている雨水が区域に侵入していないところを見ると、ぶちまけられた水も消えると思うんだけれど……。

 ──そして、僕の予想通り、水筒からぶちまけられた水も、区域に入るや否や蒸発するように消えてしまった。


「固体もダメ。液体もダメ。と、なると……気体もダメか?」

「さぁね。あいにく、こんな雨の中、気体の用意ができるほど僕は器用じゃないよ」


 気体……タバコの煙? 何かを燃やした際に出る煙? どっちにしろ、僕はタバコなんて吸わないし、燃やす物も持ち合わせていない。燃やすにしたって、こんな雨の中で何をどう燃やせばいいのやら。
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