ディスオーダーⅡ【短編集】
「嫌な世の中になったものねぇ……。さあさ、昼ご飯の用意が出来たから、席につき──な、さ──い……」
ふたり分の食事をテーブルに運ぶ母さん。──のはずだったのに、どんどんおかしな声になって、歯切れが悪くなっていることに気付いた僕は、反射的にそちらを振り返る。
にこりと微笑んだまま、その場に立ち尽くす母さん。両手には運んでいる最中のふたり分の食事。何もおかしなことはない。そう、何もおかしなことなど無い。
──母さんの身体の中心に、縦に向かって伸びる。
「母さん……?」
──1本の赤い線が浮き出ていること以外は。
ぱかっ。
擬音で表すのならばとても軽快なものだろうに、目の前にひろがる真実はとても信じられないもので……残酷なもので。
「あ……ぁ……かあさ……」
口が震えて、まともに声が出せない。身体中も震えていって、サァーっと体温が下がっていくのが分かる。
……──母さんは、身体の中心に現れた赤い線をもとに綺麗に真っ二つに割れて、その場に崩れ落ちた。
恐る恐る視線を上に向ければ、わずか1cmほどの穴が天井には空いていて……。
その遥か上には、まるで僕たちを嘲笑うかのように、小さく顔を覗かせる青い空の姿があった。
「うわあああ!!!」
雨が降らない区域。
それは今でも、日に日に増えている。
END.
ふたり分の食事をテーブルに運ぶ母さん。──のはずだったのに、どんどんおかしな声になって、歯切れが悪くなっていることに気付いた僕は、反射的にそちらを振り返る。
にこりと微笑んだまま、その場に立ち尽くす母さん。両手には運んでいる最中のふたり分の食事。何もおかしなことはない。そう、何もおかしなことなど無い。
──母さんの身体の中心に、縦に向かって伸びる。
「母さん……?」
──1本の赤い線が浮き出ていること以外は。
ぱかっ。
擬音で表すのならばとても軽快なものだろうに、目の前にひろがる真実はとても信じられないもので……残酷なもので。
「あ……ぁ……かあさ……」
口が震えて、まともに声が出せない。身体中も震えていって、サァーっと体温が下がっていくのが分かる。
……──母さんは、身体の中心に現れた赤い線をもとに綺麗に真っ二つに割れて、その場に崩れ落ちた。
恐る恐る視線を上に向ければ、わずか1cmほどの穴が天井には空いていて……。
その遥か上には、まるで僕たちを嘲笑うかのように、小さく顔を覗かせる青い空の姿があった。
「うわあああ!!!」
雨が降らない区域。
それは今でも、日に日に増えている。
END.