without you
机の隅にクロスした両足を置いて、椅子の背に寄りかかり、右手でクロスワードのブックを、左手でボールペンを持って漢字を書いている社長の姿が、容易に想像できた私は、口元に少し笑みを浮かべた。
でもすぐにそれを引っこめると、ごまかすように咳払いを一つした。

「これは確か・・・こうじゃなかったかな」と私は言いながら、社長が書いていた“寒”の部分の隙間に、“塞”と書き直した。

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