without you
左手首につけたばかりの腕時計を、半ばウットリと眺めている私に、社長が「木戸」と呼びかけた。

「はい」
「おまえ、ハッピーか」
「・・・え?っと・・たぶん・・はぃ」
「ならいい」と社長は言うと、私にニッコリ微笑んだ。

私は、いきなり社長にそんなことを聞かれて、面喰っているというのに。

「別に誕生日じゃなくてもさ、“ハッピー!”って言えるような毎日をおまえが過ごしてるなら、それでいい」

そう言いきった社長の凛々しい顔に、分厚い体と大きな手に、そして圧倒的な存在感に、私はドキッとした。
なぜなら、社長の言葉には、説得力があったから。

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