without you
「社長っ、すみません。私・・」
「急所は外れてるから大丈夫だ。それより、俺こそ悪かった。おまえは馴れ馴れしくされるの嫌いだって知ってんのに、おまえの姿が救世主のように見えてな。つい・・・これ、セクハラじゃねえから!」
「分かってます」
「そっか・・・。なあ木戸」
「はい?」
「やっぱりおまえ、俺を落とす気ねえのか?」
「全然ないです」
「そう言わずに、俺を救うと思って。な?金なら俺が後で払うから」
「自分で自分を競り落とすなんて、それこそ不正行為じゃないですか」

私に睨まれた久遠社長は、すがる目を保ったまま、でも私から視線をそらして、「うっ」と唸った。
そして、近くにいる吉瀬さんからは、プッとふき出す声が聞こえてきた。
いけない、いけない。
社長を睨むのは止めないと・・・それよりこの囁き会話、外まで聞こえてないよね?

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