without you
「よっ。なぁ木戸ー」
「はい?」
「“あまのじゃく”って、漢字あるのか」
「あぁ。ありますね」と木戸は言うと、左手に持っていたボストンバッグを下に置いて、もう一つのバッグからスマホを取り出した。
そしてパパッと検索をかけると、「天邪鬼」とか「天の邪鬼」と書かれた画面を、俺の目の前に見せてくれた。

「どうしたんですか、急に」
「ん?いや。ふと思っただけだ」と俺は言いながら、「天邪鬼」って酒の銘柄みたいだなと思った。

そこまで木戸には言ってないが。
代わりに「サンキュ」と言った。

< 331 / 636 >

この作品をシェア

pagetop