without you
確かに「かえりたい」と呟いた木戸は、体を微かに震わせて泣いている。
しかも眠ったまま。

俺の全身に、雷に打たれたような衝撃が走った。
静かに泣くところが、しかもまだ眠ったままってところがこいつらしいと思いながら、それ以上に木戸のことが愛おしいと思った。

こいつのことは、普段から護りたいと思っている。
しかし、誰かのことを護りたいとこんなに強く思ったのは、誰かのことを愛おしいと、魂が揺さぶられるくらい、ここまで強く思ったのは、俺にとって、生まれて初めての経験だった。

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