without you
土鍋の蓋に、「その松」と小さく彫られていたので、想像はついていたけど。
思ったとおり、中身はフグ鍋だった。
昨日食べ損ねたから、わざわざ持って来てくれたのかな。
そういう優しいところは、やっぱり久遠社長らしい。
つい顔に笑みが浮かんだ私は、それからすぐにため息をついた。
正直、今日はもう、社長に関わる気はなかったんだけど・・・お礼の電話は入れておくべきだろう。

でも、久遠社長は電話に出なかった。
私は、何となくホッとしながら、同時に避けられてるのかもしれないと思いつつ、フグ鍋を受け取ったことと、お礼のメッセージを、社長に送信した。

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