without you
久遠社長から「あみか」と呼ばれて、私は、俯いていた顔を上げて、向かいの社長を見た。

「一つ聞くが」
「・・・はい」
「なぜおまえは度が入ってないメガネをかけてるんだ?」
「・・・え」

私は、咄嗟に今かけているダテ眼鏡のフレームに手をやった。

「そっ、それは・・・」
「おまえさ、コンタクトもつけてねえだろ?」
「いぃえ・・」
「じゃあなんだよ。言ってみろ。笑わねえから正直に。なっ?」
「・・・ホントですか」
「ホーントホント」
「あのぅ。別に大した理由じゃないから、そんなに期待の目で見られても困るんですけど」

と前置きした上で、デキる秘書に見せるための小道具だと、渋々「正直に」言うと。
やっぱり社長に笑われてしまった・・・。


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