without you
「おまえが何考えてたか俺には分からんが、良いことってのは分かる。だっておまえ、笑ってた」
「・・・嘘でしょ」
「いーや。確かに笑ってた。顔が。おまえ、普段はあんまり表情変わんねえけど、こう、ほら。何だっけ・・・えぇいっ!さっきまで頭ん中にあったのに。言葉出てこねえ!」
「度忘れですね」
「そっちじゃねえよ!ほらっ、少しとか、そういう時使う。あーっ!ここまで思い出してんだよ。思い出さないとモヤモヤするだろ?おまえも思い出せ!」
自分ののど仏あたりを人さし指で指しながら、「うおーっ!」と吠える社長を、私はチラッと見た。
そして私は、ヒールの音を静かに響かせて、自分の席への方へ歩きながら、「“私が”思い出すことじゃないですよ」と言った。
「・・・嘘でしょ」
「いーや。確かに笑ってた。顔が。おまえ、普段はあんまり表情変わんねえけど、こう、ほら。何だっけ・・・えぇいっ!さっきまで頭ん中にあったのに。言葉出てこねえ!」
「度忘れですね」
「そっちじゃねえよ!ほらっ、少しとか、そういう時使う。あーっ!ここまで思い出してんだよ。思い出さないとモヤモヤするだろ?おまえも思い出せ!」
自分ののど仏あたりを人さし指で指しながら、「うおーっ!」と吠える社長を、私はチラッと見た。
そして私は、ヒールの音を静かに響かせて、自分の席への方へ歩きながら、「“私が”思い出すことじゃないですよ」と言った。