without you
あれから、久遠社長は、彼女さんのことを、私には話していない。
私から聞くことはしないし、社長も自分から話すこともないと思っているのだろう。
ただ、3月14日のホワイトデーに、社長からクッキーをもらったとき・・・。

『義理のプレゼントのやりとりは、禁止してるんですよね』
『偶然なんだよ。この前姉ちゃんからクッキーもらって。すんげーうまかったからさ、みんなにも食べてもらおうと思ってよ。それとホワイトデーが重なったのは、偶然だったんだ。だからあみか、俺を睨まないでくれよ』
『・・・そうでしたか。じゃあ後でみなさんに配っておきます』
『下のヤツらの分は、もう立川に任せたぞ』
『え?じゃあこれ全部』
『おまえの』
『こんなにたくさん・・・』
『それは俺の・・感謝の気持ちだ。おまえにはいつも世話になってるからな』
『そんな・・・』

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