without you
このぬいぐるみの体は、ハリみたいに尖ってないから、チクチクしない。
むしろ、柔らかな毛並だから、つい撫でてしまう。
思わずほころびそうになった顔を、慌てて引き締めた私だけど、「なんか・・・撫でても見てるだけでも癒されます。ありがとうございます」と言った声は、とても穏やかに響いていると、自分でも思った。

「机に飾ってもいいぞ」
「遠慮しておきます」
「あーやっぱり。そう言うと思ったぜ」

クスクス笑う久遠社長につられるように、私もクスッとだけ笑った。

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