without you
決して届くことはない、久遠社長への片思いを断ち切るため、「A-spade」を辞めて引っ越すことが、私にとってベストな選択だと思う。
と思って、私は再び退職届を書いた、というか・・。
以前書いていた退職届を、新たに書き写した。
でも、日付は以前と同じ、空欄のまま、新調した白封筒に、未封のまま、ボストンバッグに入れた状態で。
どうしてもそれを出す勇気がない。
今のうちに久遠社長から離れることがベストだと分かっていながら、それでも一緒にいたい、仕事上だけでもいいから、できる限りつながりを持っていたい、という気持ちの方が勝ってしまう。
今日こそは・・いや、明日。来週、社長は忙しいから、今ここで突然私が辞めると・・・夏にある講演までに、サポートとフォローを補強しておかなければ・・・と、自分の中に口実を設けては、退職届を出すことを、ズルズル引き延ばしていた。

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