without you
涙が出る前に、ダテ眼鏡をサッとかけた私は、ショルダーバッグを肩にかけた。
そして、ボストンバッグを持とうと、少し屈んだそのとき。
開いている社長室のドアから「木戸さーん!入りまーす!」と言う、立川さんの元気な声が聞こえた。

私は慌てて「どうぞ!」と言いながらショルダーバッグを下に置くと、椅子に座った。
それとほぼ同時に、立川さんが私の席へやって来た。
食べ物を乗せたお盆を、両手に持って。

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