without you
「今のうちに風呂入って少しでも疲れを取っておけ。あとでまた来る」と社長は言うと、部屋のドアを静かに閉めた。
私は数秒だけ、その場に立ったまま、閉められたドアを見ていた。
それから、フゥっと息を吐いて、ボストンバッグを手に持つと、部屋についているバスルームへと歩いて行った。



バスルームのドアを閉めた私は、そこに背をつけて、また息を吐いた。
そして、ゆっくりとしゃがんで、ボストンバッグを開けた。
愛嬌のある変わらない笑顔で、私を見ているハリネズミのぬいぐるみのミス・ヘッジホッグが、パッと目に入る。
私は、泣きそうな顔で、ミス・ヘッジホッグに笑みを返すと、ゆっくりと立ち上がり、服を脱ぎ始めた。

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