without you
「仮病だったのか」
「いえ、そこまでは。でも、ちょっと鼻声になったという程度で」
「そりゃ立派な仮病レベルじゃねえか。結局あいつは、風邪だ、病気だと言えば、おまえが看病しに来てくれる、おまえと一緒に過ごせると思ったわけだ。だが、おまえは仕事に行った。当然の選択だ。だが、あいつにとっては理に適ってなかった」と言う社長に同意するように、私は頷いて肯定した。

「そうです。それからなぜ来てくれなかったんだ、俺より仕事を選ぶなんてと言いだして」
「うっわぁ。小せえなあ。てかほら、あれだ・・・狭い?に似た言葉!」
「せこい、ですか」
「そーそー、それだ!せこいぜあの野郎!」

あいつに対して、また憤慨している社長の顔が、なんか・・・可愛いと思ってしまった私は、こんな時なのに、ついクスッと笑ってしまったけど、すぐ笑みを引っこめた。

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