without you
私は、顔を右横に向けて、隣の久遠社長を見た。
キリッとした濃い顔立ち。
大きくて澄んだ彼の目は、まるで私の心の中まで覗き込んでいるみたい。

「おまえはもう、独りで闘う必要はない。俺がいる。俺を信じて頼ればいい。今までも、これからも。ずっと」

・・・そうだ。
私はもう・・・独りじゃない。

胸が温かく、じぃんと震えた私は、嬉しくて、涙が出そうになった。
でも私は、涙を流す代わりに、隣にいる、愛しい彼に微笑んだ。
泣きそうな笑顔で。

すると彼は、少し驚いた顔をして、「あぁ、っと」と言いながらうろたえた。
そして、私から視線を逸らすと、ベッドからスクッと立ち上がった。

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