without you
「いい式だったな」
「本当に。来ていたのは、“A-spade”の人がほとんどだったからかな、私たちも含めて。良い意味でアットホームだった」
「ああ」

黒ジャケットとグレーのベストを脱いだ純世さんが、私の前に立った。
私の両手は自然に、彼の首元に伸びて。
淡い水色のネクタイを、ほどき始めていた。

この“仕事”は私の。
そういう密かな結びつきにも、幸せを感じる。

「あったかい感じで。最初から最後までずっと、自然に祝福ムードが漂ってて。出席できて、本当によかった・・・はい、できました」
「サンキュ・・なあ、あみか」
「はい?」
「おまえは、今日みたいな式にしたいか」
「いいですね。でも家族には、ぜひ出席してほしいです」
「もちろん。俺の家族も」

純世さんが顔を近づけたのが先か、それとも、私が彼のほどいたネクタイを、両手で自分の方に引っ張ったのが先だったのか。
とにかく、私たちはくっつけるだけくっついて、キスをしていた。
最初は啄むように、それからだんだん深く、濃く。
何度も何度も唇を触れ合って。

先に仕掛けたのは、純世さんだった。
舌を絡めるキスをしただけで、彼の中心はもう硬くなっている。
「相手がおまえなんだ。しょーがねえだろ」なんて言うところが、いかにも彼らしい。

「ん・・」
「自然現象だ」
「条件反射、でしょ」
「どっちでもいい・・あっ!ちょっと、破れる」
「いいよ。新しいの買うから」
「そんなのもったいな・・・」
「い」まで言い終わらないうちに、純世さんは私を横抱きにすると、数歩歩いてベッドに座らせてくれた。

「神社と教会、どっちがいい?」
「教会かな。今日みたいなガーデンチャペルでも・・・着物ってどうしても、苦しそうだから。ドレスの方が楽かも、って」
「なるほど。じゃあドレスの式、ってことで・・・ハネムーンはどこ行こうか。イタリアにするか?おまえ、行きたがってたよな」
「パスポートないです」
「だから取れよ」
「そのうち。必要になったら」

こんな会話をしながら、お互い身につけているものを、次々と脱いで、脱がせて。
純世さんのワイシャツのボタンを外すのは、ちょっと手間取ったけど、私たちは、生まれたままの姿になった。
あぁ。この人の体は何度見ても、戦士のように逞しい・・・。

立ち上がっていた私は、目の前にいる純世さんを見ながら、彼の厚い胸板に両手を這わせ置くと、そのままベッドに押し倒した。

「おぉいっ!」
「まだ。寝てて」

私は純世さんの上にまたがると、彼の体を探索し始めた。

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