without you
おなかを刺された私は、人工脂肪のおかげで、無傷で済んだ。
あいつは、「子どもなんかいらない。欲しいのはみかちゃんだ」と供述したそうだ。
つまりあいつには、殺意があった。
私に、ではなく、私の赤ちゃんに対して。
しかもあいつは、それを自覚している。
もし、私が本当に妊娠していたら、おなかの赤ちゃんは、あいつに刺し殺されていたかもしれないと思うと・・・心底ゾッとする。
でも、もしそうだったら、あいつの罪は、その分重くなり、服役期間もより長くなるはずだけど・・・これで良かったんだ。
妊娠していなくて、良かった。
まだ私たちの元へ来ていない、未来の赤ちゃんを護ることができて、本当に良かった。

チーム寺井のみなさんが、“妊娠8ヶ月目”で私の護衛を止めた・・のではなく、実際は、緩める程度に規模を縮小した間に、あいつが私をつけ回し始めた証拠の写真などを警察側に提出したことも決め手となり、あいつは有罪になった。
これであいつはしばらく―――長い間―――刑務所行きだ。
たとえあいつが出所しても、私に近づくことは、公的にできなくなった。

「・・・本当に終わったのよね?」
「ああ、終わったんだ」

手を繋いで歩いていた私は、思わず隣の純世さんに抱きついた。

彼の温もりに、私は何度助けられただろう。
彼が与えてくれた信頼の絆に、私は何度救われただろう。

「・・・純世さん」
「ん?」
「ありがとう」

私のそばには、いつも彼がいてくれた。
嬉しい時も、辛い時も。
これからもずっと、私のそばにいてほしい。
私もあなたのそばに、いるから。

「大好き。愛してる。愛してる・・・」
「あみか。俺も・・・」

純世さんが私の顔を上向けた。
そして、熱いキスをする合間に、「愛してる」と囁いてくれた。
何度も、何度も。

あいつには、私に関わる愛する人たちにも近づけさせない。傷つけさせない。
もう二度と。

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