without you
「この仕事をしていると、この程度の断りは当たり前ですから。木戸さん、どうか私に交渉の機会を与えてもらえませんか?」
「・・・」
「メールで詳細をお送りしたとおり、木戸さんにとって、これは決して悪い話ではないはずです。今現在、転職を考えていらっしゃらなくてもいいんです。でも、話を聞いていただいた上で、ご考慮いただければ」

・・・この人、口が上手い。
まぁ、こういう交渉事を仕事にしているのなら、上手いのは当たり前なのかもしれないけど・・・。
宮崎社長の名前まで出して、津島さんが私のことを騙そうとしているとは到底思えないから、引き抜きは、本当に、本当の話なのだろう。
と思いながら、私は、久遠社長と初めて会った面接の時のことを、思い出していた。

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