彼女の「恋」がちょっとおかしい笑笑
この春、俺は高校3年生になった。
新しいクラス、新しい友人、と気持ちは高ぶる筈だが、ほとんどが顔見知りでいつもと同じような感じだ。
若干つまらなさを感じていたがそれもすぐに消えた。
隣の席は話したことのない「彼女」。
背中に届く黒髪に大きな瞳、色白な肌、黒の縁メガネ、華奢な体。
おとなしそうに見えながらも純粋な可愛さが引き立つ「彼女」はちょっとした有名人だ。
3組の山谷が気になっている、数学教師に放課後迫られていた、何人かの生徒と関係をもってる、バイトは夜の仕事、などなど。
どれも嘘かほんとかわからない怪しい噂だが「彼女」の風貌を見るとほんとの様に思えてしまう位の魅力はあった。
「あっ…」
小さく声を漏らした「彼女」の方を向く。
視線の先には落ちた消しゴム。
拾おうと身を屈めた瞬間、窓から風が吹き込んだ。
その時「彼女」の艶やかな黒髪が揺らめき、長かった前髪がその綺麗な瞳を写し出した。
目を奪うには十分な瞬間だった。
タイミングが悪かったとしか言いようがない。
「はい。」
「彼女」の触った消しゴムを俺が今、触っている。
ああ、これが一目惚れか。
そう思った四時間目の授業だった。