魂‐soul‐
「聞いてや!途中で会ってんけど武流のやつ、全然急がへんねん!」
 
「十分ぐらい、いいじゃねぇか」
 
「その十分が大事なんや」
 
この半年、この二人と待ち合わせする度にこの茶番を見る羽目になる。

放っておくと小一時間続くことも分かっていた。
 
「早く行こうや」
 
「あ~。ちょっと待って」
 
立入り禁止のフェンスを乗り越えようと、足を掛けた湊に武流がストップをかけた。
 
「なんやねん」
 
「あともう一人来るんだよ」
 
「もう一人?」
 
朔馬も知らなかったようだ。
 
「来れば分かるって」
 
さらに待つこと五分。

こちらへ向かってくる人影が見られた。
 
「来た来た」
 
武流と同類なのか、走ってくる気配は全くない。

暗がりで顔がよく見えないが、近づいてくるにつれて足の長い美少年であることが分かった。

「おまたせ」

「あ!」
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