魂‐soul‐
湊と朔馬は声を揃えて驚いた。

湊は彼が誰なのかよく知っている。

彼もまた氷上学園の生徒である。渡瀬雅(わたせみやび)。

学校一の有名人である。

良く言えば「曲者」。悪く言えば「厄介者」。

三年生で、一年の湊たちとは関わる機会は全くといっていいほどないのだが、噂は一年生の教室まで届いていた。

最低限の出席日数しか出てこず、自分が興味のないことには一切関与しない。

勝手気ままな野良猫とは彼のことだろう。

しかし、彼の美貌は女子の注目を集めるのには充分だった。

そして何より、頭がいい。

学年に一つ設けられるS組(スペシャルクラス)に在籍している。

まさに才色兼備。

憧れる者がいれば妬む者もいた。

そして武流はその前者だ。

教師も雅には頭が上がらない。
 
「雅先輩…ですよね?」
 
湊が確認の為、恐る恐る尋ねた。
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