魂‐soul‐
後ろの会話を聞きながら、湊は辺りを見回しながら前進した。

しかし、一向に何か起こる気配もなく、歩き始めて一時間が経とうとしていた。

これ以上深入りすれば、引き返すのも時間がかかる。

立入り禁止になるような場所なだけに期待が大きかった分、落胆も大きかった。

そして、少しでも父親失踪の事実に近づけるような気がしていた。

具体的に何をと聞かれればよく分からないが。
 
「なぁ……もうこれ以上行っても同じやから帰らへん?」
 
湊が諦めも露わに言った。
 
「いや、もう少し粘ろうよ。こっち」
 
今度は雅が先頭を切った。

馴れない砂利道で足が少し疲れてきたころ、武流が歓喜の声を上げた。
 
「あれ見ろよ」
 
武流の指さす方を見れば、森の中には似つかわしくない豪邸を見つけた。

暗闇に浮かびあがった家は、家というよりも館である。何坪なのか検討もつかない。

自分の家がいくつ入るだろうか。

湊が指折り数えていると、雅が歩き出した。
 
「何があるんだろ~ね」
 
足は真っ直ぐ館の方に向いていた。
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