魂‐soul‐
「例えば、俺が他人の身体に入ったら周りの人間に何とか訴えようとするで。それに、ここのことも話す。でも、テレビでそんなことは何も言ってへんかったし」
 
「そりゃそうだよ。ここの記憶はこの館から出るときに自然と消えるからね。それと、魂と記憶は別物だよ」
 
「魂と記憶?」
 
「魂っていうのは『心』。簡単にいうと性格だね。で、記憶っていうのは、何月何日にどこで何をしたっていうもの。つまり出来事だね。記憶っていうのは、脳みそに詰め込まれている。だから、魂が入れ替わっても記憶というのは身体の一部である脳に宿っているから変わらないし、消えないんだ。自分が他人の身体に入った瞬間に、その他人の記憶が活用されるから違和感は全くない。逆に自分の身体にいたときの記憶はなくなる。そして、この館から出るときにはここにいた記憶は消えるのさ」
 
事細かな説明をされればされるほど、より事実に聞こえる。そして、それに加えこの魁人が後に要求してくることが見えてきた。
< 29 / 170 >

この作品をシェア

pagetop