魂‐soul‐
八時二十五分。

教室の扉を横へスライドさせると、黒板消しが真正面から飛んできた。

とっさに避けると、それは廊下を挟んだ後ろ側の窓に激突した。

ピンク色に染まった窓。

あれが自分の顔面に当たるかもしれなかったと思うとほっと胸を撫で下ろした。
 
「くっそ、当たんなかった」

指を鳴らして悔しがったのはクラス一のお調子者、神道武流(しんどうたける)。東京出身。

身長は一般高校生男子の平均である湊よりも少し低く、最近本人も気にしているところだった。

昨日の生活点検で引っかかった茶髪も改善されていない。
 
「何すんねん!」
 
お返しとばかりに湊が投げた黒板消しは、武流の右足に当たった。
 
「うっわ!」
 
「俺の剛速球見たか!」
 
二人のやり取りを見ていたクラスメートが笑い出す。

氷上学園は成績順にクラス編成が行われる。

つまり、一年生は入試の成績順である。湊のクラスは合格ギリギリの、通称「落ちこぼれ1‐F」
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