魂‐soul‐
今もなお、被害者は後を絶たない。

一時的に警備員が配置され、子どもの被害は減少した。

しかし、その事件に興味をもったのはむしろ子どもより大人の方が多かった。

大人の執念はすさまじく、別ルートを探ってまでも入ろうとする。

仕方がないので、今は数日に一回明るい時間に見回りが行われている。

そして今日、武流の提案で、前々から立てられていた計画が実行されようとしていた。

彼らには絶対迷わない自信があった。

なんといっても、氷上学園は偏差値七十五を越える全国有数トップレベル校。

ゆえに、1‐Fも一般的には賢いのである。

学校のレベルが高いだけでなく、教師の質にも拘っているところが親の人気を集めていた。

東大への進学率が非常に高いのも魅力の一つだ。

毎年各地から入学希望者が絶えないため、希望寮制となっている。

今年の1‐Fは地方出の者が多く、大阪出身は湊と朔馬を含めても、十数名しかいない。

入学当初は方言をヒントに出身地当てゲームが、はやったものだ。

朔馬とは幼稚園の頃から一緒で、俗に言う幼馴染だ。

エリート校といえば、堅物共の密集地帯のようなイメージがあったが、そんなもの二日で崩れ去った。

もっとも、そんなクラスは1‐Fしかないのだが。

湊はこのクラスが大好きだった。勉強は鬱陶しいが、この仲間達となら頑張れる。そう湊は思っていた。
 
「八時に森の前でな!」
 
武流の声と始業ベルの音が重なった。
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