俺様な狼上司に迫られて!
「あ…どうも、初めまして。
松岡サユリと申します。」
「初めまして、律樹の父の雅司(マサシ)です。」
「母の奈緒(ナオ)です。」
「姉のまりなです。」
次々と挨拶を交わす4人を見ながら
俺は神経を敏感にさせた。
一丁前に皆して服装をキメてきている。
「では、行きましょうか。」
そう言いながら
予約していたらしい、高級レストランへと連れて行かれた。
---これだ。
まず1番初めに試されるのがここだ。
マナーについて。
特に金持ちの良い家柄の家系というわけでもないのに
なぜかコレにこだわるのは、姉のせいだろう。
(あのクソ姉貴…。)
見栄っ張りの姉は
昔から自分より格下と思う女性と
俺が付き合うのを拒否していた。
俺の好きにさせろと言いたいところではあったが
今まではこの姉のせいで
恋愛に興味がなかった俺は
流されるままにそれに従ってきていた。(無意識のうちに)
全員が席についたところで
すぐに運ばれてきたドリンクを持ち上げて乾杯をする。
「…さて、好きなものを注文して構わないからね。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
(………。)
緊張を外に見せないように
必死に平常を保とうとしているサユリだが
隣でこんなに背筋良く座っているお前を
俺は見たことがない。
「何がいい?
ここはパスタが良いらしいけど。」
「そうなの?
じゃあ…コレとコレ、どっちがいいかなぁ…。」
なるべくリラックスさせてやりたいという気持ちで
俺はサユリに話しかける。
2人でメニューを見て
結局サユリが悩んだ片方を俺が頼み
もう片方をサユリが頼むことにした。
「ふふ、仲良しねぇ?」
母がそう言いながら
優しそうに俺たちに微笑みかける。
---それに俺は騙されない。
この笑顔の裏に
何が隠されたか分かったもんじゃない。
俺の家の女の壁は…かなり堅い。