俺様な狼上司に迫られて!





いびられているというのに
私は不思議と呑気だった。



どちらかというと
隣にいる律樹の様子に神経を使っている気がする。



これを見ると
お前はタフだな、とおーちゃんなら言ってくるんだろうな。






「まぁまぁ、2人ともやめなさいよ。
せっかくの食事会なのに。」







そう言って2人を宥めたのは
律樹のお姉様、まりなさんだった。



律樹を見てわかる通り
やはり美形家族である神崎家。


まりなさんも
いかにもお嬢様らしく
上品で清楚な女性だった。



…品があるってこういうことか。



と目の前で知らしめられた気がする。







「ごめんなさいね、サユリさん。
お見苦しいところをお見せして。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。」






全く気にしてませんから

とは言わずに、心におさめておく。



何と無くその方が都合が良い気がしたから。









「そういえば、サユリさんは今おいくつなの?」

「22です。今年で23になります。」

「あらそうなの。
ってことは律樹とは3歳違いなのねぇ。」






---やっと、普通の話題が回ってきた。




王道の平和な会話にたどり着くのに
何故こんなに遠回りしたのだろう

と少し思ったが


それが彼女の性格なんだろうと
それについては深く考えないことにした。






「律樹とまりなも3歳違いなのよ。」

「あ、そうなんですか。
お姉さんお若いですね。」






私とそんなに変わらないか
少し下に見えるくらい綺麗です


と正直に言えば

お母様はそれを聞いて
当たり前だとでも言うように
口元に笑みを浮かべた。




これは別にお世辞ではなく
本当に思っていること。







「やだ、言葉が上手いんだからサユリさんたら。」

「いえいえ、本当に思ってますよ。」






ははは、と笑いながら
優しく微笑んでくるお姉様に
そう答える。




…何か、律樹が言うほど
お姉様はそんなに強い人には思えないなぁ。





というかお母様が強すぎるっていうのもあるだろうけど。






(お父様も別に意地悪な感じしないし…。)






というより
何だか知的で威厳がある、という意味では確かに怖さはあるけど


おとなしく
そんなに話すわけでもなく
ただ皆のやりとりを見て


小さく微笑んでいる タイプ。







(うーん…。)







私は隣で気を張っている律樹をチラッとみる。



家族の前であるというのに
私よりリラックスしていない様子の彼。






(別にそんな見張るような態度を取らなくても…。)






と思いながら
私は食事を進めた。







< 123 / 212 >

この作品をシェア

pagetop