俺様な狼上司に迫られて!
(…っ、律樹が言ってたのはこれか…。)
さっきまで彼がまりなさんを
睨んでいた理由をやっと理解した。
…この光景、まるでよくある女子トイレでのイジメだ。
「お返事は?」
「………。」
「…答えてくださらないの?」
---人の質問にも答えられないの?
そう言って
馬鹿にするように笑みを浮かべる彼女が
もういじめっ子にしか見えない。
…いや、まぁ実際そんな感じなんだけどさ。
「……あの」
化粧直しを再開する彼女に
私はキッパリと告げる。
「…彼とは、別れません。」
当たり前だ。
誰がそんな理由で別れるのよ。
私はそう思いながら
彼女の横顔を見つめる。
まりなさんは薄く笑みを浮かべながら
私の方を見て
「20歳越えてまで
結婚のできない"お遊びの恋愛"は
するもんじゃないわよ。」
そう 言った。
結婚のできない…
その言葉を聞いて
すぐにまりなさんとお母様のことか、と察する。
私たちの結婚に
許しを出すつもりはないらしい。
「…私ね、あなたみたいな女性が嫌いなの。」
「………。」
教養がなくて
品もなくて
女性らしさもそこまで感じられない
「そんな女性と律樹が結婚だなんて…
私の身内にそんな人いて欲しくないのよ。」
そう言ったまりなさんが
化粧直しを終えて
こっちへ向き直る。
「-----さ、戻りましょう?」
そう言った天使のような笑みが
私にはもう
悪魔の微笑みにしか見えなかった。