俺様な狼上司に迫られて!
ナイスタイミング!と思いながら
私は切り替えて
その料理を「美味しそうだね!」と褒める。
おーちゃんと陸也くんもそれに合わせてくれた。
だけど…
「………。」
律樹1人だけが黙ってフォークとスプーンを取る。
皆もそれぞれ取って
いただきます、と言ってから口をつけ始める。
…やっぱり律樹、怒ってるなぁ。
(事故だとは言え…何かごめん。)
家でゆっくりできる時間を
こんな風に不愉快に過ごさせて
申し訳ない気持ちになりながらも
それを周りに感じさせないように
話を振りながら食事を楽しむ。
「今サユリは何の仕事してるの?」
「OLだよ。普通に。」
「俺は安定のアパレルでーす!」
「タイガはもう知ってる。」
おーちゃんの明るいキャラクターに助けられながら
どうにか律樹の放つピリピリとした雰囲気を誤魔化す。
おーちゃんが陸也くんと話している間に
私は律樹に小さく耳打ちする。
「ごめん、さっきのは事故だから…。」
「…分かってる。」
とは言いつつも
拗ね気味の律樹に、私は小さく息をつく。
可愛い嫉妬ではあるけど
お願いだから、もう少しだけ我慢しててください
と私は頭で願う。
「…なぁサユリ。
律樹さん…気分でも悪いのか?」
---しかしそんな時に限って
陸也くんがそう私に言ってくる。
私は え、と声を出してしまい
慌ててそれを否定する。
「こ、この人割といつもポーカーフェイスだからさ!
これが普通の姿なの!あ、あはは…。」
……嘘を付くのが下手くそな自分を恨みたい。
あからさまに動揺している私に
おーちゃんが苦笑いをしている。
陸也くんもそれを感じ取っているのかいないのか
「へぇ〜…。」
と相槌を打ってから彼をチラッとみる。
…気まずい。
「…律樹さん、お酒でもどうですか?」
「え、ちょっとそれは…!」
そんな中で、陸也くんがそんな提案をする。
それに私が反応する。
(っ…律樹に今お酒を飲ませたくない…!)
いつあの酒癖の悪さが発揮されるか分からないと思いながら
陸也くんを止めるけど
それに対して律樹が
私を制して返事をしてしまう。
「…そうですね、飲みますか。」
律樹のその言葉に
陸也くんはフッと笑みを浮かべる。
…嫌な予感。