俺様な狼上司に迫られて!
「…は、はは!律樹のやつ、酔ってちょっとテンションおかしくなってんだよ!
だから気にすんなよ、サユリ?」
大丈夫大丈夫、と私を慰めるように
おーちゃんがハッとしてから
そう声をかけてくれるけど
私は引きつった笑顔にしかならず
「あ、うん…。」
とだけ言葉を返す。
------初めて、拒否された。
今まで何度も怒ったり
嫉妬されたりはあったけど
こんな風に拒否をされたことは無かった。
「…サユリ……。」
隣の陸也くんが
心配して私の顔を覗き込んでくる。
そして私の背中に
優しくトンッ、と手を当ててくれた。
(……やばい…。)
せっかく2人がいるのに。
笑ってなきゃいけないのに。
-------ドクン
----------ドクンッ!
(……何か…嫌な予感がする…。)
何、この不安?
何だか律樹が…
私から 離れて行くような予感。
「っ!」
(---ダメ、そんなこと考えたら。)
私は胸の中に渦巻く
嫌な予感を押しつぶすように
ハッとして、気をしっかり持つことを意識する。
…大丈夫。
こんなことで簡単に何か起こるわけない。
そう信じよう、と決めて
私は2人に「ごめんね!」と謝る。
「…まぁちょっと俺もトイレ行って
あいつの様子見てくるわ!」
私の表情に少し安堵を見せつつも
気を利かせたおーちゃんが
優しく笑って、そう席を立つ。
そして必然的に残った私と陸也くんだけの瞬間が訪れた。
「…大丈夫かね、彼氏さん。」
「…大丈夫だよ。少し今日は疲れてたみたいだから。」
ちょっと機嫌が悪いだけだよ
と私は小さく笑うけれど
陸也くんは私の言葉に
少し険しそうな表情をする。
「……でもさ、少し子供だよね、彼。」
(…え……。)
思ってもない陸也くんの言葉に
私は思わず
目を見開いて 彼を見る。
…陸也くん?
(どうして…?
そんなこと言うような人じゃないのに…)
そんな風な気持ちで彼を見れば、
陸也くんが私を見てはっきり言う。
「だって、久々に会った俺とサユリの再会も許してくれてない感じじゃん。
…そのうち、酷い束縛されるんじゃないの?」
そう言いながら
冗談なのか本気なのか
彼は苦笑いを浮かべながら私にそう言う。
-------やめてよ。
律樹は…そんなことしない。
そう思うのに
私は目の前の陸也くんの顔を見て
---嫌な鼓動がバクバクと鳴る。
「すぐあんな嫉妬されちゃ、サユリの身がもたないと思うけどなぁ。
…嫉妬のされすぎって
愛されてるってより、信用されてないって感じしない?」
ドキンッ
…ドキンッ
(--------やめて……。)
「普通の男…
もし俺だったら、こんな風にサユリを困らせたりしないよ。」
---ドキンッ
ドキンッ
(--------っ…やめて…。)
嫌な鼓動が
更に増していく。
「……サユリさぁ。」
(-------っ、やめて!)
もうこれ以上
怖いこと言わないで!
そう思うのに、
彼の口は止まらず
そしてついに
彼に核心をつかれる----。
「……サユリさぁ。
…本当に彼に、愛されてるって言えなくない?」