俺様な狼上司に迫られて!





「律樹…っ!!」






お店を出て行った彼を追って走る。


そして彼の腕を掴んで
名前を呼びかける。




…しかし







「っ、触んな!!」






-----バシッ!




と 私はまた手を振り払われてしまった。




そして振り返った彼の表情に

私は目を見開いた。







「…り、つき……。」








目の前には

辛く苦しそうに顔を歪めた---律樹の顔。






「……何ですぐ断らなかった。」






律樹は低い声でそう言った。






「それは…少しびっくりして…。」

「はっ。本当かよ。
…実際迷ってたんじゃねぇの?」






私の答えに

律樹が鼻で笑いながらそう言う。



…は?何言ってんの…?







「そんなことあるわけないでしょ!
律樹と付き合ってるんだよ私?」

「でもあいつがアメリカ帰るって言ったとき結構動揺してたしよ。」







手だって重ねるわ見つめ合うわ

メニューも仲良く見てるしよ…!!





とイラつきを最大限に
私にぶつけてくる律樹。




(ちょ…それは謝ったでしょ!?)




それに誰だって知り合いが
海外に行くって聞いたら驚くし
そりゃ動揺するよ…!!







「じゃあ私は律樹以外の男の人と
お話ししたり表情変えたりしたらダメって言いたいわけ?!」

「そんなこと言ってねぇだろ!
第一お前は鈍くて無防備だから…!」






はぁ?!

誰が鈍くて無防備なのよ!!






(私だって…ちゃんと気をつけてるつもりだし!)






それにそんなこと言ったら

律樹だって同じようなことしてるじゃん!!







「律樹だってそんなこと言ったら
会社の女子と愛想良く笑いあってるじゃん!」

「それは会社だからだろ!仕事は別もんだろうが!」

「あぁ、そう?!
自分は特別で私は全部ダメなわけ?!」






何年ぶりかに会った友達と
普通に楽しく食事も許されないわけ?


しかも彼…すぐアメリカ帰るんだよ?!



それなのに興味なさそうに返事して
愛想も悪くしないとダメなわけ?!

彼氏がいるから?!







「そんな…そんなの律樹のワガママじゃん!!」







----律樹を止めるつもりが

何故かこうして言い合いになってしまった私達。




律樹は私の言葉を聞いて


言葉を一旦抑えて

私から目を逸らしてから 続けた。







「…あぁそうだな。俺の我儘だよ。」







(…あ……。)



彼のそう言った声で私もやっと

ハッと正気に戻る。




…ごめん、そんなことを言おうとしたんじゃないのに…。







「俺は我儘だし嫉妬深いし
束縛みたいなこともしてるし
お前に嫌な思いも沢山させてるよ。」

「……律樹…?」







-----ドクンッ






その時

また嫌な鼓動が 鳴り始める。








「…はっ…あいつの言う通りだよ。
俺はお前を苦しめてる。」

「…何、言ってんの…?」

「お前はあいつといた方が
きっと幸せになれる。」







(---------っ!?)







律樹の言葉に

私は目を見開く。





そしてまた




鼓動が鳴った。







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