俺様な狼上司に迫られて!
「帰りますよ私。」
「あ?何でだよ。
今日何か予定でもあんのか。」
「いやないですけど…。」
帰ると言っている私を
部長は帰すつもりがないらしく
ならいいじゃねぇか と続ける。
いやいや
そんな簡単に言っていい言葉じゃないですよそれ。
(ただの上司後輩が
どうして家デートみたいなこと…。)
他に知られたら完全にアウトだろ。
勘違いされちゃうぞ。
「ダメです。帰ります。」
「……何だよ、そんな嫌なのかよ。」
(え………?)
何だか声の調子が弱々しくなった部長に
私は少し驚いて
そっちを見る。
部長は
少し拗ねたような、残念がっている顔で
そっぽを向いていた。
な、何でそんな顔するんですか……。
(…好きじゃないくせに
そんな顔するなんて なんつー小悪魔…。)
そんな顔して
何人の女性を落としてきたのか尋ねたいくらいだ。
子供のように可愛く拗ねている部長に
こんな私でも心がキュッと掴まれる感じがした。
「そ、そんな顔しなくたって…
暇ならお友達でも呼べばいいじゃないですか。」
「……はぁ、お前は何も分かってねェ。」
私の言葉を聞いて
部長が深いため息をつく。
わかってないって…
「何を分かってないって言うんですか。」
私がそう部長に尋ねる。
後輩で
しかもこんなどうでもいい女といるより
仲のいい友達と
楽しく過ごされた方がいいじゃないですか。
そう思いながら部長を見れば
食べ終わった朝食の食器を持って
部長が立ち上がる。
その時に
小さく、でも私に聞こえるように
落ち着いた低い声が 私の耳に入る。
「…お前と居たいから言ってんだよ。」