俺様な狼上司に迫られて!






「あー!サユ〜こっちこっちー!」

「---------。」







はぁ、とため息を吐きたくなるほど
奴の顔はアホ面。



私を見つけて
ニコニコしながらブンブン手を振ってくる。



ある程度お酒を飲んで
気分がいいのか、雰囲気が
電話の時よりもほんわかしている。







(そんな風に手を振るんじゃないこの子は…。)







身長が高い分、腕も長くて

ブンブン振る手が何と無く周りに危ない。








「ったく、もー。
何でこういつも急なのかねあんたは…。」

「ごめんねー。
でもサユ優しいから そんな俺の相手してくれるでしょ?」





ありがとー、とケラケラ笑いながら
私を隣に座るように促す彼。



---やってきたのは駅前のバー。




1人で寂しく飲んでるから来い
というこの男の指示でやってきた。




明日も仕事あるから
そんな長居はしたくないんだけどなぁ…。






「おーちゃん、明日仕事なんじゃないの?」

「そーだよ?
でも今日は特別〜。」





と言ってヘニャっと笑う彼…"おーちゃん"。

私の昔からの彼へのあだ名だ。






「特別って?」

「んーっとね〜
今日はサユにお願いがあってさぁ。」

「お願い…?」






私が尋ねると
そうそう!と言って笑うおーちゃん。



おーちゃんが私にお願いなんて珍しい。



何だろう、と思い私が首を傾げると






「今度また一緒に飲みに行かない?」






と、一言。




……は。


え、それだけ?







「…それさ、電話で言えば良くないすか。」






つい、率直に言葉が出る。

こんな時間にこんな場所に
呼び出された意味がないんだけど。




そういう思いを込めて
おーちゃんに軽く睨めば

ケラケラと笑いながら
まぁまぁ、と言われる。







「他にも聞きたいことあってさ〜。
…ゆっくり話したいなぁ、って。」






久々に会ったんだもん、いいっしょ?




ちゃっかり整っているその顔で
優しく微笑まれて

私はうっ…と反論できなくなる。





…世の中イケメンはずるい。






< 59 / 212 >

この作品をシェア

pagetop