俺様な狼上司に迫られて!
部長が混乱する私を連れて行った先は
路地裏。
人通りの少ない道での路地裏だったので
まずここに気づく人はいないだろう。
部長はそこへ私を入れて
そして逃げ道を塞ぐように私の顔の両側を手で塞ぐ。
(っ……すごい、怒ってる…。)
目の前で私を見下ろす部長を
恐る恐る見上げれば
その瞳には 熱く宿る---怒り。
そして部長が低いトーンで
私に言う。
「お前…どういうつもりなわけ。」
(どういう、つもり…?)
私は部長を頭で繰り返す。
…部長は誤解してるんだ。
おーちゃんと、私の仲を。
何も答えない私に
問い詰めるように
部長はさらに顔を近づけて
私に言った。
「…誰だあの男。
何であんな親しげなんだよ。」
-----ゾクッ…
耳元で聞こえる部長の低い声に
思わず私は背筋を震わせた。
(と、とりあえず誤解を解こう…!!)
そう思って、私も口を開いた。
「あ、あの人は私の幼馴染なんです!」
「…幼馴染…?」
「はい。…今日久々に呼び出されて、
飲み過ぎで酔った彼に肩を貸しただけで…。」
私の心配をして
親みたいな気持ちで手を握っただけで
特に下心はない、
と私が説明すれば
部長は…
「………。」
私の顔の横にある顔を動かすことなく
少しの間その状態でいた。
…誤解、解けた…よね?
「……はぁ。」
私がこの状況に緊張して
体を固まらせていると
部長は大きくため息を吐いて
その息が…私の肩にかかる。
「紛らわしいことしてんじゃねェよ。
…焦って、かっこ悪ィ。」
そう言って顔を上げた部長が
私の顔を見下ろす。
不機嫌そうだけど
その顔は恥ずかしいのか、赤い。
(部長…そんなに心配したんだ…。)
なんか、可愛いところあるんだなぁ。
…てかこれって…
「部長、嫉妬…ですか?」
私がそう尋ねると
部長は図星だと言わんばかりに
うっ…と顔をしかめる。