俺様な狼上司に迫られて!






いや、別に

俺ら昨日付き合ったんだから
汚すも何も無ェんだけど。





と俺がはぁ?という顔をしていると

タイガが
俺は知ってるぞ、といった顔で
俺を見てきた。







「手の早いお前のことだから
もうサユリのこと襲ってんだろ!!」

「………。」







タイガは
「俺のサユリがぁーーー!!」
と兄的立場で嘆いていた。


ったく、誰が手ェ早いだ。

お前に言われたくねェよ。






(俺だってな……)








「…俺だって色々我慢くらいするっつの。 」

「あー?じゃあお前まだヤったことないって誓えんのかよ!?」

「あぁ、誓えるよ。」

「ほら見ろおまっ……って、え?」








俺の静かな返事に

タイガは目を点にして
俺を見た。




…何だよ、その顔は。






(俺だって…俺だってあの日……)










手を出せるものなら 出したかった。





欲望に負けて

事故でもいいから抱いてしまえば良かったと




何度も思ったことがある。









「…え、えぇぇえぇえ?!?」








静かな部屋に
タイガの叫ぶ声だけが響いた。



…うるせぇ。





俺は耳を塞ぎながら
眉間にシワを寄せて タイガを見る。

落ち着け。黙れ。







「え、それマジで言ってる?」

「おう。」

「……信じられねぇ。」







そう言って目を見開きながら
ゆっくりビールを飲むタイガ。




そして飲み終わってから
気持ちが落ち着いたのか

話を一旦変えてきた。








「……じゃあ、お前いつから好きだったんだよ。」

「あ?…んなのいつでもいいだろ。」

「ダメだ!俺には聞く義務がある!」






お前はあいつの本当の兄かよ…


と多少呆れながらも
引き下がらないタイガに

俺はため息を吐いて
話し始める。









「……はじめは、去年の夏。」






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