俺様な狼上司に迫られて!
-------あいつと関わりを持ったのは
去年の夏が最初だった。
「神崎部長ー。」
まぁいつものように
女子に囲まれて ちやほやされてる時に
1人の社員が俺のところにやってきた。
…あ、また女だ。
(……こいつもか。)
仕事と言いながら
個人的に仲良くなろうとしてくる女子社員が山程いたのもあって
初めはこいつに警戒していた。
-----それがサユリだった。
「ここと、これと、これなんですけど…。」
「あぁ、これはこうで…
こことかは…こうすれば、ほら大丈夫。」
…なんて
いつものごとく愛想良く振舞って
笑顔を送れば
必ずと言っていいほど
ツンケンしてる女子社員ほど
コロッと俺のファンになってくれたりするのだ。
まぁ味方は多い方がいいかなってことで
特に好いて欲しいわけではないが
愛想良く生活していた。
……が。
「あー、なるほど!
ありがとうございましたー!」
と
サユリはそのまま話を続けることなく
パーっと笑顔を向けて
スタスタ歩いて行ってしまった。
「あ、うん…。」
思わず拍子抜けで
間抜けな返事が出た。
(珍しい女だな……。)
-----それから
愛想が良い分
人とも仲良くなりやすいため
どんどん頼ってくるかと思いきや
ほぼあれから俺にものを聞いてくることはなく。
というより1人で仕事を黙々と頑張っていた。
(………。)
他の女子みてぇに
息抜き的なことしないのか、あいつ。
そんなことを思いながら
休憩時間にオフィスの外から
仕事を進めているあいつを見ていた。
---その時
パッと
一瞬顔を上げたあいつが
外から見ている俺と目が合った。
(-----あ、やべ。)
目が合うと
勘違いされたり、騒がれたり、寄ってこられたり
ちょっとめんどいことになるのが通常だったからか
俺は咄嗟にそう思った。
だが
あいつは立ち上がることもなく
ただ優しく微笑んで
座ったまま軽くお辞儀をしただけだった。
それからまた仕事に戻っていった。
(…あれ、あいつ…)
本当に、俺のこと興味ねェんだ。
そう思った瞬間
何故か"寂しい"という気持ちが 起こったのだ。