グッドバイ
隼人が肩を強く押して、美里はベッドに倒れこんだ。スプリングが弾んで、のりの効いた、甘くて人工的な匂いにむせる。
すでに半分ほどはだけていたブラウスを乱暴にたくし上げ、ウェストから背中へと手を入れる。熱い手の平に蹂躙されると、美里は自分を庇うように身を丸めた。
シーツを握りしめた手を離せないでいる。むしろ拳が白くなるほどに、固くしっかりと掴む。
「力を抜かないと、服が破れるよ」
むき出しの肩に唇を寄せて、隼人が囁く。その声の振動にさえも感じて、身体が紅く染まるのが分かった。
隼人は握りしめた指を、優しくそっと解いた。
緩んだ腕から、グレーのスーツ、ブラウスと抜き取られていく。美里は、シーツの冷たさに鳥肌を立てる。普段用のベージュのブラを剥ぎ取られると、思わず目を腕で覆った。
「俺を見ろよ」
「嫌」
「逃げられないように、して欲しいんだろ?」
隼人はそう言うと、美里の両腕をグッとベッドに押し付けた。
「縛る?」
「嫌よ」
「本音?」
「……そう」
「わかった、じゃあ縛る」
隼人は枕からカバーを引き抜くと、捻って紐にした。美里はベッドの上をジリジリと後ずさったが、隼人の手が足首を捉え、あっという間に組み伏せられる。
両腕を背後で一つに縛られると、皮膚のねじれる痛みが走った。
「痛い」
「痛いくらいが、いいんだ」
隼人が言った。
自由の効かない身体で、隼人の眼前に転がる。隼人は、美里の脇の下から腰のくびれを、指でそっとなぞっていく。我慢できずに小さい声が漏れた。
「こういうの、初めて?」
「うん」
「好きだろ?」
「うん」